- 公開日: 最終更新日:
Web制作のコーディング指示書とは?書き方と使えるツール
Webサイトを制作する際に、デザインや構成の意図を正確に伝えるためには、コーディング指示書の存在が欠かせません。特に外部のコーダーや複数の制作メンバーと連携する場面では、情報の共有漏れがトラブルにつながることもあります。
このページでは、コーディング指示書とは何かから、書き方や記載内容、便利なツールまでを紹介します。
目次
Web制作のコーディング指示書とは
コーディング指示書は、単にコーダーへ情報を伝えるだけでなく、Web制作全体の進行を円滑にする役割も担います。プロジェクトの早い段階で仕様を整理することで、チーム全体の認識がそろい、タスクの分担やスケジュール管理がしやすくなります。
また、案件の引き継ぎや再制作、将来的な改修の際にも、指示書があれば仕様の意図をスムーズに確認することができます。特に継続的な運用や保守が求められるWebサイトでは、情報の一元管理ツールとして有効です。
コーディング指示書が必要な理由
Web制作の現場では、見た目だけでは伝わらない仕様やルールが数多く存在します。リンク先の設定、アニメーションの動き、画像の扱い方、SEOやアクセシビリティへの配慮など、制作時に判断を求められるポイントは多岐にわたります。
これらを曖昧なまま共有してしまうと、意図しない実装や手戻りが発生し、スケジュールの遅延や品質の低下につながりかねません。コーディング指示書を作成しておくことで、こうした仕様を事前に文書で明確に伝えることができ、認識のズレを最小限に抑えることができます。
特に外注のコーダーや複数人のチームでプロジェクトを進める場合には、情報を標準化する手段として非常に有効です。また、納品後の改修や保守の際にも、指示書があることで迅速な対応が可能になります。
制作物のクオリティを安定させ、作業効率を高めるうえで、コーディング指示書は不可欠な存在です。
コーディング指示書の書き方
コーディング指示書は、制作したデザインが意図通りにWeb上で再現されるよう、コーダーに対して正確な情報を伝えるための資料です。書き方に決まった形式はありませんが、誰が見ても理解できるよう、画像とテキストを組み合わせて視覚的に伝えることがポイントになります。
まず、デザインカンプやワイヤーフレームのスクリーンショットを用意し、それに対して説明文や指示を付け加えていきます。たとえば、このテキストはh2で表示、このバナーは別ページにリンク、このボタンはクリックでフェードインといった具合に、要素ごとに対応する動作や属性を明示します。
ツールとしては、PowerPointやGoogleスライド、Figma、PDFなど、スクリーンショットに注釈を加えられるものであれば自由に使えます。ポイントは、どのパーツが何の役割を持ち、どのように動作するのかを正確に伝えることです。
単なる文章だけでなく、ビジュアルとテキストを組み合わせることで、伝達ミスを防ぎやすくなります。実際の作業に入る前に、制作側と開発側の認識をすり合わせておくことで、実装のズレや後工程での修正リスクを大きく減らすことができます。
コーディング指示書に書く内容
コーディング指示書には、Webページを正しく実装するための細かな仕様を記載します。ここでは、実務でよく使われる代表的な内容について解説します。
リンク先の指定
リンクの設定は、ナビゲーションやボタンなど、ユーザーの導線設計に関わる重要な要素です。
コーディング指示書では、リンクの対象ページを正確に記載し、どのテキストや画像にリンクを設定するのかを明確にします。また、別タブで開くかどうか、PDFや外部サイトかどうかなどの開き方の指定も必要です。
こうした情報が抜けていると、意図しないリンク先に設定されたり、ユーザーの使いやすさを損ねる可能性があるため、細かく伝えることが求められます。
動きの指定
アニメーションやスライダー、フェードインなどの動きは、ユーザーの視線誘導や印象づけに効果的です。これらを実装するには、開始タイミングやトリガーの条件、アニメーションの種類や速度などの情報をコーディング指示書に記載する必要があります。
スクロールで表示されたらフェードインする、5秒ごとにスライドが切り替わるといった具体的な表現を用い、曖昧な表現は避けましょう。実装担当者にとって再現性の高い指示があることで、完成形のイメージに近づけやすくなります。
hタグの指定
Webページの構造化に欠かせないhタグの指定は、SEOやアクセシビリティの観点から重要です。見出しがh1からh6まで正しい階層で設定されているかを明確にし、見た目の大きさだけでなく、文書構造としての意味を伝えることが大切です。
この見出しはh2、サブ見出しはh3といったように、各テキストがどのレベルの見出しに該当するかを記載しておきましょう。これにより、検索エンジンにも正しく内容が伝わり、ユーザーにも読みやすい構成になります。
画像のalt属性
alt属性は、画像が表示されない場合の代替テキストとしてだけでなく、SEOや視覚障害者向けの支援技術においても重要な役割を果たします。
コーディング指示書では、各画像に対してどのようなalt属性を設定すべきかを指定します。たとえば、会社外観の写真、製品の使用イメージなど、画像の内容が分かる短い説明が適しています。
また、装飾目的で意味を持たない画像にはalt属性を空にするといった判断も明記しておくと、実装の手間を減らすことができます。
classなどの命名ルール
コーディングの効率や保守性を高めるために、クラス名やIDの命名ルールを共有しておくことも大切です。社内で決めた命名規則を基準に、再利用性や管理のしやすさを意識した命名を行う必要があります。
コーディング指示書には、このパーツは〇〇というクラス名で統一するといったルールや、特定のパターンを使う理由もあわせて記載しておくと、複数人の開発でもブレが生まれにくくなります。
対応ブラウザ
現代の主要ブラウザはほとんどの仕様に対応していますが、特定の条件で古いバージョンへの対応が必要な場合は、あらかじめ指示書に記載しておくべきです。
また、OSごとの見え方や、スマートフォン・タブレットといったデバイスごとの表示にも注意が必要です。対応ブラウザを明確にしておくことで、テスト範囲を事前に共有でき、不具合の検証工数や調整作業の効率化につながります。
コーディング指示書に使えるWebツール
コーディング指示書は、形式に決まりがあるわけではないため、ツール選びも自由です。ここでは、実務でよく活用されている便利なツールを紹介します。
AUN
AUNは、Webページや画像に対して直接修正指示を書き込める無料のWebサービスです。
登録不要で使える手軽さが魅力で、URLを読み込むだけでその画面に付箋を貼るようにコメントを追加できます。PCに保存された画像にも対応しており、Webページ以外の資料にも柔軟に使えるのが特徴です。
操作は直感的で、コメントには自動的に番号が振られるため、①の見出しをh2に変更などのように、具体的かつ分かりやすい指示が可能です。
また、指示を書き終えたらURLで共有できるため、チャットやメールなどでコーダーやデザイナーにすぐ送ることができます。無料プランでも、書き込んだ内容は7日間保存され、相手が指示に済、電話くださいなどのリアクションを返せる機能も搭載されています。
プロジェクト単位でスピーディーに指示をやり取りしたい場合に非常に便利なツールです。
Googleスプレッドシート
Googleスプレッドシートは、表形式でコーディング指示書を作成したい場合に便利なクラウドツールです。
複数の担当者とリアルタイムで共有・編集ができるため、進捗管理や役割分担にも適しています。行ごとに、対象ページ、対象要素、指定内容、備考といったカラムを設定することで、指示内容を整理しやすくなります。また、コメント機能や変更履歴機能を活用することで、やり取りの履歴も残せる点が大きなメリットです。
Web制作に関わるメンバーが多い場合や、仕様が頻繁に更新される案件では、情報を一元管理できるGoogleスプレッドシートが非常に有効です。
PowerPoint
PowerPointは、スクリーンショットをベースに視覚的に指示を伝えたいときに活用しやすいツールです。デザインカンプを貼り付け、そこに矢印や吹き出しでコメントを付けることで、視覚的にわかりやすいコーディング指示書を作成できます。
特に、細かいレイアウトの説明やアニメーションの動き、要素間の関係性など、文章だけでは伝えにくい内容を図解したい場合に向いています。社内でPowerPointの利用が多い制作チームであれば、共有や確認もスムーズに行えるでしょう。
まとめ:Web制作ならコーディング指示書はなるべく作成しよう
コーディング指示書は、Webサイトを正確かつ効率的に実装するために欠かせない資料です。事前に細かな仕様を整理しておくことで、開発の手戻りを減らし、品質の高い成果物を安定して提供しやすくなります。
リンク設定やアニメーション、構造的なマークアップなど、見た目だけでは伝わらない情報こそ丁寧に伝えることが重要です。プロジェクトの規模や体制にかかわらず、可能な範囲でコーディング指示書を作成することが、円滑な制作進行と信頼性の高いWebサイトづくりにつながります。
まだ導入していない場合は、手軽に始められるツールを活用して、取り入れていくことをおすすめします。
また、デザイン段階の指示内容については、Webデザイン指示書とは?必要性や書き方を紹介で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。