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DtoCとは?意味やメリット・デメリット、成功事例を解説
企業が直接消費者に商品を届けるDtoCというビジネスモデルが注目を集めています。近年、EC市場の拡大とともにDtoCブランドが増え、従来のBtoCやBtoBと異なる新しい販売戦略が求められています。
本記事では、DtoCの意味やビジネスモデルの特徴、メリット・デメリット、市場規模、成功事例までを解説します。DtoCブランドを検討している企業に役立つ情報を網羅していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
DtoCとは?意味やビジネスモデル
DtoC(Direct to Consumer)とは、メーカーが小売業者を介さずに、直接消費者に商品やサービスを販売するビジネスモデルです。従来の流通モデルは、商品はメーカーから卸業者、小売店を経由して消費者の手に届きますが、DtoCではこれらの仲介を省き、自社のECサイトや実店舗を通じて販売を行うのが特徴です。
DtoCのビジネスモデルでは、販売経路を自社でコントロールできるため、価格設定やブランドイメージの維持がしやすいメリットがあります。また、仲介マージンを省けるため、利益率を高めやすい利点もあります。
一方で、流通や販売を自社で担う必要があるため、ECサイトの構築、マーケティング、物流管理などの運営コストが発生するのが特徴です。
このビジネスモデルは、アパレル、コスメ、食品、家具、家電など幅広い業界で活用されており、特にブランドの個性やストーリーを強く打ち出せる企業に適しています。DtoCブランドは、自社の世界観を大切にしながら、SNSやWeb広告を活用し、顧客と直接コミュニケーションを取りながら成長していくのが一般的です。
DtoCの市場規模
DtoC市場は、国内外で急速に拡大しており、今後も成長が期待されている分野です。
従来のBtoCでは、メーカーが小売業者やECモールを経由して消費者に商品を届けていましたが、DtoCでは企業が直接ECサイトを運営し、ブランド価値を最大限に生かした販売戦略を展開できます。そのため、多くの企業がDtoC事業へ参入しており、市場規模は年々拡大しています。
国内DtoC市場の動向
日本国内におけるDtoC市場は、2025年までに約3兆円規模に成長すると予測されています。特に、アパレル、食品、コスメ、日用品などの分野でDtoCブランドが増えており、SNSやWeb広告を活用したダイレクトマーケティングが主流になっています。
また、消費者の購買行動の変化もDtoC市場の拡大を後押ししています。従来の実店舗での購入からオンラインでの購入へとシフトし、企業が消費者とダイレクトに関係を築くことが可能になった点が大きな要因です。
米国DtoC市場の規模と成長性
DtoC市場が最も成熟している米国では、2023年時点で約18兆円規模に達すると予測されています。消費者の購買行動のデジタル化が進み、ブランドが独自のECサイトを通じて直接販売を強化する動きが加速しています。
特に、サブスクリプション型や、パーソナライズされた商品・サービスの提供が成功の鍵となっています。
DtoC市場の今後の展望
国内外のDtoC市場は、引き続き拡大の傾向にあり、新規参入企業の増加が予想されます。特に、ECサイトの制作が容易になり、SNS広告の活用が一般化したことで、中小企業やスタートアップでもDtoC事業を始めやすい環境が整っています。
また、消費者の購買体験の最適化が今後の市場成長において重要なポイントとなります。DtoCブランドは、単に商品を販売するだけでなく、ブランドストーリーの発信やコミュニティ形成を重視し、ファンを獲得する戦略が求められています。
DtoCとその他のビジネスモデルとの違い
DtoCは、メーカーやブランドが仲介業者を介さずに直接消費者へ商品を販売するビジネスモデルです。一方で、BtoBやBtoCなど、異なる流通形態を持つビジネスモデルも存在します。ここでは、DtoCとBtoB・BtoCの違いについて解説します。
BtoBとの違い
BtoBは、企業同士で取引を行うビジネスモデルです。
例えば、メーカーが部品を製造し、それを別の企業へ販売するケースが該当します。BtoBは一般消費者を対象としていないため、取引単価が高く、契約ベースでの販売が中心です。
一方で、DtoCは企業が消費者に直接商品を販売するため、価格設定やマーケティング戦略を自由に設計できるのが特徴です。BtoBとは異なり、ブランドの世界観を前面に出し、広告やSNSを活用して直接顧客と関係を築くことが重要になります。
また、DtoCは個人顧客に向けた小口販売が中心であるため、BtoBと比較すると1件あたりの取引単価が低くなる傾向があります。ただし、リピート購入やサブスクリプションモデルを活用することで、継続的な売上を確保しやすい点が強みです。
詳しくは、BtoBサイトとは?をご覧ください。
BtoCとの違い
BtoCは、企業が消費者に商品やサービスを販売するビジネスモデルです。企業は、小売店やECモール、自社ECサイトなど、複数の販売チャネルを通じて商品を提供するのが特徴です。
一方、DtoCは仲介業者を介さず、企業が直接消費者に販売する点がBtoCとの大きな違いです。小売店を通さないことで、価格設定やブランド戦略を自由に設計でき、消費者データも直接活用できるメリットがあります。
DtoC企業は、ECモールを利用する場合もありますが、あくまで販売の主導権を自社で持ち、価格やマーケティング戦略を自由に決定できる点が特徴です。特に、SNSやWeb広告を活用したダイレクトマーケティングを重視する傾向があり、顧客との直接的な関係構築が重要になります。
詳しくは、BtoCサイトとは?をご覧ください。
DtoCがECサイトを制作するメリット
DtoCでは、企業が自社のECサイトを持ち、直接消費者に商品を販売できます。ここでは、DtoCがECサイトを制作することで得られるメリットについて解説します。
手数料が発生しない
DtoCでは、小売店や卸業者を介さずに企業が直接消費者へ販売するため、中間マージンが発生しません。
従来の流通モデルでは、メーカーが商品を卸業者や小売業者に販売し、最終的に消費者へ届けられます。その過程で、流通コストや販売手数料が上乗せされるため、企業の利益率が低下しやすい傾向があります。
DtoCでは、仲介業者を排除し、商品価格を自社でコントロールできるため、利益率の向上が可能です。
自社でブランドを訴求できる
DtoCでは、企業が独自のブランドイメージを構築しやすい環境が整っています。
自社ECサイトなら、デザインやコンテンツを自由にカスタマイズでき、ブランドの世界観を統一しやすくなります。これにより、消費者に強い印象を与え、リピーター獲得にもつながります。
顧客情報を収集・分析できる
自社のECサイトを運営することで、顧客の購買履歴や行動データを直接収集できるようになります。
これにより、ターゲットに最適なマーケティング戦略を立案し、パーソナライズされた商品提案やリピート施策の強化が可能になります。小売店や卸業者を利用した場合、このような詳細なデータを得ることは難しいため、DtoCの大きな強みといえます。
幅広いマーケティングやキャンペーンが可能
DtoCでは、企業が自由にマーケティング戦略を立案できるため、ターゲットに最適なアプローチが可能です。SNSやWeb広告、メールマーケティングなどを活用し、ブランドの認知度を高めることができます。
また、自社ECサイトを運営することで、キャンペーン施策の自由度が高まる点もDtoCのメリットです。DtoCでは自社の裁量で割引キャンペーンやポイント還元、会員限定セールなどを実施できます。これにより、顧客のリピート購入を促進しやすく、ブランドのファンを増やすことが可能になります。
顧客と直接コミュニケーションを取れる
DtoCでは、顧客と企業がダイレクトにやり取りできるため、より深い関係を築くことができます。
自社ECサイトでは、チャットサポートやSNSを活用し、消費者の疑問や要望に迅速に対応することが可能です。これにより、顧客満足度の向上やブランドロイヤルティの強化につながります。
DtoCがECサイトを制作するデメリット
DtoCは企業が直接消費者に販売できるメリットがある一方で、ECサイトの制作・運営にはコストやリソースが必要になります。ここでは、DtoCがECサイトを制作する際の主なデメリットについて解説します。
ECサイトの作成に予算と時間がかかる
DtoCを成功させるには、自社ECサイトの制作が必要です。しかし、サイトの開発には一定の予算や時間がかかるため、すぐに運用を開始することは難しい場合があります。
特に、デザインや機能を充実させようとすると、開発期間が長引き、コストも増大する傾向があります。
訪問者の集客にリソースが必要になる
DtoCでは、自社で集客を行う必要があるため、SEO対策やSNS運用、広告施策などにリソースを割く必要があります。知名度のあるブランドであれば既存のファンを活かせますが、新規ブランドの場合は認知度を高めるためのマーケティング施策が欠かせません。
特に、コンテンツ制作や広告運用には継続的なコストと労力が必要となるため、効果的な集客戦略を立てなければ十分な訪問者を確保できない恐れがあります。
短期間では成果が出ない
DtoCは、中長期的な視点でブランディングと顧客との関係構築を行うビジネスモデルです。そのため、短期間で売上を大きく伸ばすのは難しく、ブランドの認知度が低いうちは売上が安定しにくい傾向があります。
特に、リピーターを増やし、ロイヤルカスタマーを獲得するまでの期間は収益が不安定になりやすいため、長期的な戦略が求められます。
DtoCのECサイトが成功するためのポイント
DtoCのECサイトを成功させるには、単に商品を販売するだけでなく、ブランドの世界観を確立し、顧客との関係を強化することが重要です。ここでは成功するためのポイントを紹介します。
ターゲットを明確に定める
DtoCでは、企業が消費者に直接販売を行うため、誰に向けて商品を届けるのかを明確にすることが成功の鍵となります。ターゲットが曖昧なままだと、マーケティング施策が分散し、効果が薄れてしまいます。
購買データや市場調査を活用し、年齢層・ライフスタイル・購買動機などを細かく分析したうえで、適切なターゲットに向けた施策を実施することが重要です。
コンテンツマーケティングを行う
DtoCでは、顧客との関係を構築し、ブランドのファンを増やすことが重要です。
そのためには、商品の魅力を伝えるコンテンツを継続的に発信する必要があります。例えば、ブログ・SNS・動画コンテンツを活用し、商品の使い方やブランドのストーリーを伝えることで、消費者の関心を引きつけ、購入につなげることができます。
また、SEOを意識したコンテンツ制作を行うことで、検索流入を増やし、継続的な集客を確保することが可能になります。
決済方法は複数用意する
DtoCのECサイトでは、ユーザーがスムーズに購入できる環境を整えることが重要です。決済方法が限られていると、購買意欲の高いユーザーでも途中で離脱してしまう可能性があります。
クレジットカードやコンビニ決済、スマホ決済、後払い決済など、多様な決済方法を用意することで、幅広いユーザー層に対応できるようになります。
PDCAサイクルを回す
DtoCでは、PDCAサイクルを回しながらサイト運営やマーケティング施策を継続的に改善することが不可欠です。売上やアクセスデータを分析し、どの施策が成果につながっているのかを把握しながら、適切な修正を加えていくことでECサイトのパフォーマンスを向上させることができます。
計画を立てて施策を実行し、結果を評価したうえで改善を加えるというPDCAサイクルを繰り返すことで、DtoCサイトの成長スピードを加速できます。特に、広告やSEO対策、コンテンツ戦略などは一度の実施で終わるものではなく、市場や消費者の動向に合わせて最適化していくことが重要です。
DtoCの成功事例
DtoCの成功事例を紹介します。
BASE FOOD
BASE FOODは、1食で1日に必要な栄養の1/3を摂取できる完全栄養食のパンやパスタを提供する食品ブランドです。主食だけで簡単に美味しく健康維持ができるというコンセプトが支持され、2023年4月時点で販売総数1億食を突破しています。
Twitter広告やInstagramでのアレンジレシピ紹介など、SNSを活用したマーケティングが功を奏しています。また、自社サイトでブランドストーリーや顧客の声を公開し、消費者とのコミュニケーションを重視しています。
BULK HOMME
メンズ用化粧品ブランドのBULK HOMMEは、DtoCの成功事例として知られています。
SNSやSEOを活用し、サッカーフランス代表のキリアン・エムバペ選手をグローバルアンバサダーに起用するなど、多角的なマーケティングを展開しています。自社ECサイトでの初回限定特別価格や定期購入コースを通じて、顧客の囲い込みに成功しています。
Allbirds
Allbirdsは、天然素材を使用した軽量スニーカーで知られる海外のDtoCブランドです。
Instagramでの広告運用により、多くのユーザーを獲得しています。商品発表時にはInstagramに投稿し、顧客からの要望を製品開発に反映させるなど、SNSと自社マーケットを連動させ、顧客満足度を高めています。
DtoCのまとめ
DtoCは、企業が自社ECサイトを活用し、仲介業者を通さずに消費者へ直接商品を販売するビジネスモデルです。従来のBtoCとは異なり、ブランドの世界観を保ちながら、マーケティングや価格設定を自由に設計できる点が特徴です。
DtoC市場は成長を続けており、国内外で成功事例が増えています。一方で、ECサイトの制作コストや集客の課題など、乗り越えるべきポイントも存在します。
成功のためには、ターゲットを明確にし、コンテンツマーケティングや決済環境の整備、PDCAサイクルを使った改善が不可欠です。DtoCを活用すれば、ブランド強化と顧客との直接的な関係構築が可能になります。
今後も、EC市場の拡大とともに、DtoCはさらに注目されるビジネスモデルとなるでしょう。