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Movable Typeとは?WordPressとの違いやメリット・デメリット
Webサイトの制作や運用に使われるCMSにはさまざまな種類がありますが、その中でもMovable Typeは企業サイトを中心に一定の支持を集めています。聞いたことはあっても、どのような特徴があるのか、WordPressとは何が違うのかが分からないという方も多いのではないでしょうか。
このページでは、Movable Typeの基本的な特徴から、WordPressとの違い、メリットやデメリット、費用の目安までを解説します。
目次
Movable Typeとは
Movable Typeとは、Webサイトの制作や管理を効率化できるCMSのひとつです。アメリカのSix Apart社が開発し、日本ではシックス・アパート株式会社を通じて提供されています。ブログツールとしてスタートした歴史を持ちながらも、現在では多機能なCMSとして、企業や教育機関など幅広い業種で利用されています。
最大の特徴は、HTMLやプログラミングの専門知識がなくても、記事の投稿やページ作成が簡単にできる点です。Webに関する高度なスキルを持っていない社内担当者でも、コンテンツの更新作業をスムーズに行えるため、運用負荷を抑えたサイト管理が実現できます。
また、Movable Typeは静的なHTMLファイルを出力する仕組みを採用しており、表示速度の安定性やセキュリティの高さにも定評があります。これにより、大規模なコーポレートサイトやアクセス数の多いメディアサイトなどでも安心して利用されています。
CMSの選定においては、知名度や費用だけでなく、運用の安定性やサポート体制も重要な要素です。その点でMovable Typeは、手厚いテクニカルサポートと確かな実績を持つCMSとして、多くの法人に選ばれています。
Movable TypeとWordPressの違い
Webサイトの制作や管理に欠かせないCMSの中でも、Movable TypeとWordPressは代表的な存在です。どちらも多くのユーザーに利用されていますが、導入後の運用体制や必要な知識、コスト面には違いがあります。ここでは、それぞれの違いを紹介します。
サポート体制の違い
Movable Typeは、日本法人であるシックス・アパート社から公式のサポートを受けられます。導入時やトラブル発生時にも日本語で対応してもらえるため、社内に専門知識がない場合でも安心です。
一方、WordPressには公式サポート窓口はなく、基本的には自分で情報を探して解決する必要があります。
セキュリティ面の違い
Movable Typeは有償ライセンス制のCMSで、ソースコードが非公開なため、セキュリティの管理がしやすいのが特長です。HTMLによる静的出力も可能で、サーバーへの負荷や不正アクセスのリスクを抑えられます。
対して、WordPressはオープンソースで広く使われている反面、攻撃対象にもなりやすく、定期的なアップデートや対策が欠かせません。
ライセンス費用の違い
WordPressは無料で使えるオープンソースのCMSで、導入コストを抑えたい場合に適しています。
一方、Movable Typeは有料のライセンスが必要で、初期費用や継続的な費用が発生します。ただし、費用にはサポートや保守の体制が含まれているため、安定した運用を求める企業には向いています。
カスタマイズ性の違い
カスタマイズの自由度では、WordPressの方が優れています。豊富なプラグインやテーマがあり、技術があれば自社内でも柔軟な機能追加が可能です。
一方、Movable Typeは業者による制作が前提となるケースが多く、カスタマイズにはやや制限があります。その分、設計の一貫性や安全性を保ちやすいとも言えます。
Movable Typeのメリット
Movable Typeには、企業サイトの運用に適したさまざまなメリットがあります。ここでは特に評価されているポイントを取り上げて解説します。
サポートがある
Movable Typeの大きな強みのひとつが、開発元であるシックス・アパート社による公式サポートの存在です。
CMSは一度制作して終わりではなく、運用中に不具合が発生したり、アップデートやセキュリティ対応が求められる場面が少なくありません。その際、Movable Typeであれば、専用のサポート窓口に相談できる体制が整っており、企業のWeb担当者にとって大きな安心材料となります。
特に、自社内に専門的な技術スタッフがいない場合や、Webサイトの運用を業務の片手間で行っている企業にとっては、プロによるサポート体制があることは大きなメリットです。
表示速度が速い
Movable Typeは、静的なHTMLファイルを生成してWebサイトを制作するCMSです。この仕組みにより、表示速度が速く、アクセスが集中してもサーバーにかかる負荷が比較的軽減されます。
動的出力のCMSでは、ページを表示するたびにサーバー上で処理が行われるため、アクセス状況やサーバーの性能によって表示速度が変動しがちです。
一方でMovable Typeでは、あらかじめ生成されたHTMLがそのまま配信されるため、表示遅延やタイムアウトのリスクが低減され、ユーザーにとってストレスの少ない閲覧体験を提供できます。
とくにページ数が多い企業サイトや、アクセス数の多いサービスサイトでは大きなアドバンテージとなります。
セキュリティに強い
セキュリティ面でも、Movable Typeは評価されています。主な理由は二つあります。
ひとつは有償ライセンス制であることです。WordPressのようなオープンソース型CMSとは異なり、Movable Typeはソースコードが一般に公開されていないため、脆弱性を突かれるリスクが比較的低くなります。
もうひとつは、静的なHTMLを出力できる点です。WordPressのようにPHPで動的にページを生成する場合、サーバー側の脆弱性を狙った攻撃の対象になりやすいですが、Movable Typeではそうした危険性が少ないです。
機密性の高い情報を扱うWebサイトや、業務用の社外向けページなどにおいて、堅牢性を求める企業に適したCMSと言えるでしょう。
Movable Typeのデメリット
Movable Typeには多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。導入前に理解しておくことで、自社に適したCMS選びがしやすくなります。
ネットに情報が少ない
Movable Typeは、WordPressと比べて国内外を問わず利用者が少なく、そのためインターネット上に情報があまり出回っていないのが現状です。
WordPressであれば、使い方やエラー対応、カスタマイズ方法などを検索すれば多くの情報が見つかりますが、Movable Typeは技術的な情報が限定されており、自己解決が難しい場面もあります。
ただし、公式サポートがあるため、すべてを自社で対応する必要がない場合には大きな問題とはなりにくいとも言えます。完全内製を前提とする企業には、導入時のハードルとして意識しておくべきポイントです。
プラグインの数が少ない
機能を拡張するためのプラグインが少ない点も、Movable Typeのデメリットです。
WordPressは数万以上のプラグインが無料・有料を問わず公開されており、SEO対策やセキュリティ強化、デザインの改善など、目的に応じた追加機能を簡単に実装できます。一方、Movable Typeは提供されているプラグインの数が限られており、その多くが有料であるため、コストや導入手間がかかる場合があります。
柔軟なカスタマイズを求める企業にとっては、検討材料になるでしょう。
導入や運用に費用がかかる
Movable Typeは有償のCMSであり、ライセンス費用がかかることに加えて、制作・運用を外部業者に依頼するケースが多いため、初期費用・運用費用ともにそれなりの投資が必要となります。
WordPressのように無料で始められるCMSと比べると、コスト面でのハードルは高く感じられるかもしれません。ただし、セキュリティや安定運用といった観点では価格に見合う価値があるとも言えます。
予算とのバランスを見極めながら判断することが重要です。
導入に専門知識がいる
Movable Typeは、導入時に専門的な知識が求められるCMSです。とくにサーバー環境の準備やPerl環境の確認、ディレクトリ構成などは、一般のWeb担当者にはややハードルが高い内容となっています。企業によっては、自社での制作が難しく、Web制作会社やシステム会社に外注する形が一般的です。
技術者を抱えていない企業や、スピーディーに立ち上げたいプロジェクトの場合には、この点も考慮しておく必要があります。
Movable Typeの機能と特徴
Movable Typeは、企業サイトや複数サイトの運用に適した機能が多数用意されているCMSです。ここでは、代表的な機能と特徴について紹介します。
独自のテンプレートタグがある
Movable Typeでは、独自のタグMTタグを使って、柔軟なサイト設計が可能です。このMTタグはHTMLに近い構文で構成されており、プログラミング知識がなくても扱いやすい点が特徴です。
タグは大きくブロックタグとファンクションタグの2種類に分かれ、目的に応じて使い分けられます。たとえば、記事タイトルの表示、最新記事の取得、カスタムフィールドの出力など、更新頻度の高いコンテンツの自動表示に活用できます。
これにより、コンテンツの管理が効率化され、更新ミスも防ぎやすくなります。運用面での作業負担を減らしたい企業にとって非常に有用な機能です。
ブロックエディタ機能で編集ができる
Movable Typeには、直感的にページ作成ができるブロックエディタが搭載されています。
ページを構成する要素をブロック単位で管理できるため、見出しや段落、画像、リストなどを自由に組み合わせてレイアウトを調整することが可能です。各ブロックの順番はドラッグ&ドロップで簡単に並び替えができ、細かいデザイン調整や情報配置の変更にも柔軟に対応できます。
また、画像のalt属性や表示サイズの指定、吹き出しの挿入なども標準で行えるため、HTMLを直接触らずにリッチなページを作成できる点も魅力です。初心者でも迷わず使える設計になっており、社内での更新業務を内製化したい企業にとっては大きな助けとなる機能です。
Movable Typeの料金
Movable Typeには、利用形態や運用体制に応じて選べる複数の料金プランがあります。導入コストやサーバー管理の有無などを比較し、自社に合ったプランを検討することが重要です。
Movable Type software(ソフトウェア版)
Movable Typeのソフトウェア版は、ライセンスを一括購入して自社サーバーにインストールして使うパッケージ型のプランです。
価格は99,000円(税込)で、購入時には1年間のテクニカルサポートが付属しています。2年目以降も年間メンテナンス契約を結ぶことで、サポートの継続と最新バージョンの提供を受けられます。
自社でサーバーを運用しており、システム管理やセキュリティ対応に慣れている企業にとっては、コストパフォーマンスの高い選択肢です。反面、導入や運用の手間を考慮する必要があります。
Movable Type cloud(クラウド版)
クラウド型のMovable Typeは、ソフトのインストールやサーバー管理が不要で、申し込み後すぐに利用を開始できる点が魅力です。
月額料金は5,500円(税込)からで、プラン内容により最大380,160円(税込)まで幅があります。テクニカルサポートも月額料金に含まれており、システムの保守管理やアップデートを意識する必要がありません。自社にITインフラの専門スタッフがいない場合でも、安心して運用できます。
運用負荷を軽減したい中小企業や自治体、教育機関などに人気のプランです。
ENTERPRISE SOLUTION(エンタープライズ版)
大規模サイトの制作や運用に特化した機能強化版がENTERPRISE SOLUTIONです。
Movable Type PremiumやMovable Type Advancedなど複数のエディションがあり、自社サーバーにインストールして使用します。価格は825,000円(税込)からで、セキュリティやカスタマイズ要件の高い案件向けです。
大規模なCMS移行や、官公庁・金融系の高信頼性が求められるWebサイトに導入されるケースが多く、導入にはパートナー企業の支援が必要になることが一般的です。
Movable Type AMI Edition on AWS Market Place
AWS上で利用できるAMI Editionは、Movable TypeがあらかじめインストールされたAmazon Machine Imageを利用することで、短時間でCMS環境を構築できます。
利用料金は0.07ドル/1時間〜または499ドル/年〜と、柔軟な課金体系となっています。AWSに慣れている技術者がいる企業にとっては、インフラとCMSを一体化して運用できる便利な選択肢です。
スケーラビリティが高く、トラフィックの増減にも柔軟に対応できる点が大きなメリットです。
Movable Typeの導入方法
Movable Typeは機能性が高い分、導入にはいくつかの準備と手順が必要です。とくにソフトウェア版を使用する場合は、自社サーバー環境の整備やインストール作業が求められます。ここでは、導入の流れを紹介します。
Perlの実行環境を確認する
Movable TypeはPerlというプログラミング言語で構築されています。
そのため、まずはPerlが動作するサーバー環境であるかどうかを確認することが必須です。確認方法は、サーバーにログインして以下のコマンドを実行します。
$ whereis perl
このコマンドにより、Perlがインストールされているかどうか、またそのパス情報が表示されます。もしPerlがインストールされていない場合は、事前に環境構築を行う必要があります。
ディレクトリ構成を準備する
Movable Typeを導入する際には、以下の3つのディレクトリをあらかじめ準備しておくことが推奨されます。
- アプリケーションディレクトリ:Movable Type本体を格納します
- スタティックディレクトリ:画像ファイルやCSS、JavaScriptなど、更新頻度の高い素材を格納します
- ウェブサイトディレクトリ:Movable Typeを使って生成されるHTMLファイルを格納します
サーバー上に分けて作成することで、セキュリティと運用管理の両面でメリットがあります。
文字コードと動作確認
各ディレクトリを作成したら、サーバーの文字コードがUTF-8に設定されていることを確認します。Movable TypeはUTF-8で動作する設計となっているため、文字化けやエラーを防ぐためにこの設定は重要です。
その後、Movable Typeに同梱されているmt-check.cgiというスクリプトを使って、サーバー環境が正しく動作するかを確認します。このスクリプトは、Movable Typeの動作に必要なモジュールや権限設定をチェックし、問題がないかどうかを一覧で表示してくれます。
Movable Typeのインストール
環境の準備が整ったら、Movable Typeの公式サイトから最新バージョンのファイルをダウンロードし、先ほど用意したアプリケーションディレクトリにアップロードします。
その後、Webブラウザからインストール用のURLにアクセスし、画面に従って初期設定を進めることで、Movable Typeの導入は完了です。
Movable Typeのまとめ
Movable Typeは、安定性やセキュリティを重視したい企業にとって、非常に有力なCMSです。
WordPressと比較すると、ライセンス費用や導入の手間といったハードルはあるものの、その分、公式サポートや静的ページによる高速表示、カスタム性の高い設計など、業務用Webサイトに必要な安心と拡張性を兼ね備えています。
とくに、複数サイトの一括管理や大量のページ更新を前提とした運用が求められる場面では、Movable Typeの強みが活きてきます。
また、独自タグやブロックエディタの機能により、テンプレートやデザイン面の自由度も確保されており、現場での使いやすさも十分に考慮されています。 導入には一定の専門知識や費用が必要ですが、それ以上の価値を感じられるCMSです。
サイト運営の安全性と効率性を重視するのであれば、Movable Typeは有力な選択肢になるでしょう。